- 吹き抜けの家は光熱費や音で後悔する?
- 実際吹き抜けのある家の住み心地は悪い?
- 吹き抜けのある家に住むのが夢だけど…
モデルハウスなどで吹き抜けのある家を見ると魅力的に感じますよね。
ところが実際に住んだ人からは「吹き抜けやめたい」と後悔する声も聞こえてきます。
注文住宅づくりはやり直しができないので、建てる前にしっかり検討しておきたいところ。
本記事では吹き抜けのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
吉本えり
■略歴
大学院まで建築学を専攻し、ハウスメーカーでの実務経験を経てWebライターとして独立。
■主な保有資格
- 二級建築士
- 福祉住環境コーディネーター2級
- 整理収納アドバイザー1級
■主な実績
インテリアメディア記事執筆、住まいのコラム執筆など。詳しくは吉本えりポートフォリオを参照ください。
吹き抜けをつくるポイントや対策もご紹介するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
後悔する吹き抜けのデメリット5つ
吹き抜けをつくって後悔する理由は何でしょうか?
まずは吹き抜けのデメリットを解説していきます。
光熱費が高くなる
吹き抜けのある家は光熱費が高くなる傾向があります。
1つの空間が大きく、快適な温度に保つための空調の負荷が大きくなるからです。
特に冬はエアコンの暖かい空気が上へ上へと逃げるので、1日中つけっぱなしにしても底冷えを感じてしまいます。
快適さを求めるなら、床暖房や家を丸ごと管理する「全館空調」を合わせて導入したいところですが、設備自体の初期コストや電気代も無視できません。
吹き抜け空間の手入れが大変
- シーリングファンのほこり掃除
- 窓の掃除・カーテンの洗濯
- 照明の交換
吹き抜け空間は天井が高く、掃除や部品交換などの手入れが大変な点がデメリットです。
脚立を使った作業は面倒で、転倒などの危険と隣り合わせですよね。
また吹き抜けに窓を多く設置すると、日光が長時間あたり壁紙が傷みやすくなります。
専門業者に張り替え作業を依頼すると、足場が必要なため割増料金が必要になる場合が大半です。
音も匂いも家全体に届いてしまう
吹き抜けは1階と2階の空間がつながっているため、音や匂いまで家全体に届いてしまいます。
家族の間で起床・就寝や帰宅時間などのライフスタイルが異なると、ゆっくりテレビを見られない、話し声が気になるなど物音がストレスの原因になりやすいです。
また焼肉などの料理の匂いが広い範囲の壁に染み込むとなかなか取れません。
来客の際におしゃれな吹き抜けの部屋に案内したくても、匂いが気になってためらってしまう人もいます。
間取りの制約が大きくなる
吹き抜けを取り入れると間取りの制限が大きくなります。
2階の部屋をつくれる範囲が物理的に少なくなり、部屋の数を減らすか1つ1つの部屋を狭くして対応しなければいけません。
また吹き抜けをつくると構造上補強が必要になり、中途半端な位置に柱や梁が出てしまう場合があります。
お気に入りの家具を自由にレイアウトできないことも。
住宅内事故のリスクがゼロではない
吹き抜けがあると物を上から落としたり、子どもやペットなどが落下する危険性があります。
住宅室内の手すりや腰壁の高さは法律の明確な規定がなく、比較的自由に設計可能です(※1)。
そのため実際に住み始めてから吹き抜け周辺で危ないと思う場面に出会い、後悔する人がいます。
落下防止柵や手すりを後から追加するのはお金もかかり大変です。
建築基準法では、外部バルコニーや幅3m・高さ1mを超える大きな階段に対し、手すり・腰壁の設置義務や高さが規定されています。
一般的な住宅の吹き抜け階段の大きさでは該当しません。
吹き抜けのパターン別特徴
吹き抜けは配置により複数のパターンがあります。
ここまで説明してきたデメリットが全て当てはまるわけではないので、パターン別に詳しく特徴を見ていきましょう。
リビングの吹き抜け
メリット | デメリット |
---|---|
家族団らんスペースが開放的で居心地が良い 日当たりの良い場所に優先して配置できる リビング階段にすれば省スペース化できる | 料理の匂いが広がりやすい 油汚れや日焼けなど内装材の劣化が早い テレビや話し声が広がりやすい |
リビングの吹き抜けは最もスタンダードな配置です。
日当たりが良く過ごしやすい南側にリビングを配置するのが一般的なので、吹き抜けにするとより明るく開放的な空間にできます。
小さめの家で吹き抜けリビングの中に階段を配置すれば、省スペースに自然な動線を確保できますよ。
ただリビングは特に料理の匂いや油汚れが広がりやすく、内装材の劣化や掃除の手間につながります。
実際に住んでいる人からは、物音が気になって遅い時間にくつろげないとの声も少なくありません。
玄関の吹き抜け
メリット | デメリット |
---|---|
家に入ったときに広く感じる 高窓をつければ明るくなる 比較的小さいスペースでも吹き抜けをつくれる | 来客時に家の広い範囲が見える 外気の影響を受けやすい コスパが悪い |
リビングなど大きなスペースに吹き抜けがつくれない場合、玄関に吹き抜けを採用する方法があります。
暗くなりやすい玄関を明るくできる一方、外からの空気が流入しやすく、空調効率を考えると好ましくありません。
また費用がかかる割に長く過ごす場所ではないので、住み心地から考えるとコスパが悪い配置です。
ハーフ吹き抜け・スキップフロア
メリット | デメリット |
---|---|
開放感がある 上の階の床面積を確保できる | 施工会社によっては対応不可 施工費用が高くなる場合が多い |
ハーフ吹き抜け(スキップフロアとも呼ばれる)は、2階の半分の高さまで天井を上げた吹き抜けのことを指します。
吹き抜けの開放感は残しつつ、床面積の問題のデメリットを軽減できる点が魅力です。
ただ構造計算や施工が複雑で費用がかさみ、対応できる施工会社も限られます。
依頼するなら実績豊富な信頼できる施工会社を選びましょう。
吹き抜けにする3つのメリット
ここまで主に吹き抜けのデメリットや注意点を紹介してきましたが、吹き抜けにはもちろん魅力もありますよ。
吹き抜けの3つのメリットを解説します。
住宅内の空間が広くおしゃれに見える
吹き抜けの最大のメリットは空間を広く感じられること、そしておしゃれな部屋に演出できることです。
吹き抜けのある部屋は天井が高く視線を遮るものがないため、実際の数字上の面積より開放感があります。
また一般的な天井高の部屋よりも、シーリングファンやペンダントライト、背の高い家具などインテリアの選択肢も広がりますね。
立地条件が悪い場合は採光対策になる
吹き抜けをつくると天窓から下の階まで光が入り、明るい空間になります。
周囲に高い建物が密集している土地や、北側に面していて日が当たりにくい土地に住宅を建てる場合は、採光対策として吹き抜けがおすすめです。
特に北側の場合、強い日差しが入らないため壁紙が日焼けする心配がありません。
また日光が当たることで冬場は過ごしやすく、天窓がない場合より光熱費がおさえられる可能性もあります。
家族間のコミュケーションが生まれやすい
吹き抜けがある家は上下階の一体感からコミュニケーションが生まれやすくなります。
家族の姿が見えて気配を感じ、声をかけやすい空間です。
また開放的な家は自然に気分もリラックスさせてくれるので、家族団らんの時間が増えるでしょう。
リビングの中に吹き抜け階段を配置すれば、帰宅後必ず家族の顔を見られる動線ができるのでおすすめです。
吹き抜けで後悔する前におさえたいポイント
注文住宅で吹き抜けをつくる場合は、後悔しないために以下のポイントをおさえてみてください。
住宅の断熱・気密性能にもこだわる
吹き抜けがある家では特に断熱性・気密性など住宅の性能にこだわってみましょう。
断熱性・気密性が高い家は外部の気温の影響を受けにくく、快適な温度を長時間保ちやすくなります。
なおデザイン性や採光だけを考えて窓を多くつけると断熱性能が下がり、光熱費にも影響が出てくるので注意してください。
ハウスメーカーでは高断熱窓も用意しているので、検討してみてもいいですね。
ライフスタイルの変化も考慮して間取りを考える
家に住む人も年齢を重ねてライフスタイルが変化することを想定し、間取りを決めていきましょう。
例えば子どもが小さいうちは気づきにくいですが、身長も伸びて走り回るようになると吹き抜け周辺の場所が危ない、と感じる場面が出てきます。
また家族間でよりプライベート空間がほしくなる時期も来るでしょう。
あらかじめ施工会社に相談し、落下防止柵や手すり、遮音カーテン、内窓などを設置してもらうと安心です。
なお間取りや細かい寸法は図面上で打ち合わせするだけではイメージが湧かず、建ててから後悔することも多いです。
建てる前にメンテナンス計画を検討する
- 壁の掃除・点検
- 窓の掃除・点検
- 照明の交換(必要な場合)
- シーリングファンの掃除・点検
- ロールスクリーンの交換(必要な場合)
注文住宅の打ち合わせの段階から、吹き抜け関連で必要なメンテナンスをリストアップして計画に入れておきましょう。
自分では届かない範囲は無理をせず、定期的に専門業者に依頼してみてください。
長く住み続けて年齢を重ねると作業も負担になり、事故の原因になります。
あらかじめ予算を把握しておくと、住み始めてから予想外の費用が発生して後悔することもありません。
まとめ|注文住宅の吹き抜けは建てる前にしっかり検討しよう
注文住宅を建てるなら吹き抜けのデメリットをおさえておく必要があります。
以下の特徴から、住んでみて「吹き抜けやめたい」と後悔する人がいるのも事実です。
- 光熱費が高くなる
- 吹き抜け空間の手入れが大変
- 音や匂いが充満しやすい
ただ明るく開放感のある吹き抜けは魅力的で、北向きの立地の場合はより快適な家にできる可能性もあります。
建てる前に間取りと住宅の性能を施工会社としっかり検討して、後悔のない家づくりをしてくださいね。
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